体験運用制度によるARISSスクールコンタクトが開催
国際宇宙ステーションとの交信体験
法改正による体験運用制度を利用した初の一般局コールサインでの宇宙ステーションとの交信体験
2023年8月3日に世田谷区立烏山北小学校でARISSスクールコンタクトが実施されました。
今回実施されたARISSスクールコンタクトは、本年3月に法改正後初めての実施であることから非常に注目されていた開催で準備には約2年をかけています。
本年3月以前は、いわゆるARISS局と呼ばれる無線局を開局して、専用のコールサインを取得する必要がりましたが、改正後は一般のアマチュア無線局であっても無資格者の体験運用が可能になったため、通常の無線局のコールサインである「JA1ZSH」で運用することとなりました。
これが、国内では初の試みとなり、大変注目されたARISSスクールコンタクトとなりました。
また、体験運用制度を利用したことから、宇宙ステーション側のコールサインはアメリカのNA1SSではなく「OR4ISS」というベルギーのコールサインで運用されました。
ARISSスクールコンタクトとは
アメリカ航空宇宙局(NASA)の教育プログラム「ARISS(Amateur Radio on the International Space Stasion)School Contact
国際宇宙ステーションに滞在中の、アマチュア無線の資格を持った宇宙飛行士と子供達が、時間を決めてアマチュア無線を使い交信を行うプロジェクト。
全世界で50カ国以上の申し込みがあり、申請から交信まで約1年半から2年かか。
子供達にアマチュア無線の楽しさだけでなく、宇宙開発、通信技術への興味をかき立てる貴重な体験をしてもらうためにNASAが特に力を入れているプロジェクトです。
UAEの宇宙飛行士がISSのオペレーター
ISS側のオペレーターはUAE(アラブ首長国連邦)の宇宙飛行士「スルタン・アル・ネヤディー(Sultan Al Neyady)」(以下ネヤディーさん)さんが担当しました。
ネヤディーさんはUAEの宇宙飛行士として、初めての宇宙遊泳を行った宇宙飛行士となっています。
また、毎日のようにInstagramを使って、ご自身の宇宙での活躍を写真や動画でシェアされています。
システムのご紹介
今回のARISSスクールコンタクトで使用されたシステムの紹介をします。
いよいよ交信開始
いよいよISSが見える時間になりました。
体験運用制度を活用しているので、メインコントローラーと呼ばれる有資格者がISSのOR4ISSを呼び出すところからスクールコンタクトは始まります。
Crewはメインコントローラーによって送信のタイミングなどのサポートを受けながら交信しています。
Crewが自分の意思でPTTを押しながら送信を行っています。
交信時間は10分40秒しかありませんでしたが、全員が英語でネヤディーさんに対して一問一答形式での交信に成功しました。
Crewから英語の質問とISSからの回答
Crewは全員、英語でISSにいるネヤディーさんに質問を行う一問一答形式で交信を行っています。
その質問に対しても、ネヤディーさんは英語で回答をしてくれました。
質問内容とネヤディーさんからの回答を見てみましょう。
1日どれくらい運動しますか?
2時間30分、筋力が衰えるのを防ぐために行います。
なぜロケットは筒のような形をしているのですか?
圧力や重力に耐えられる理想的な形だから
英語のような非母国語を習得するとき、何を意識しましたか?
英語が共通語なので覚えました。
あと、ロシア語も使っています。
筑波で研修をしたので少し日本語も話せます。
宇宙に行くときに一番困難だがやりがいのあることはなんですか?
長年の訓練が大変です。
科学や勉強や体力作りが大変です。
宇宙に行く時はどんな気持ちになりましたか?
子供の頃からの夢が叶ったので嬉しかった。
無重力を感じたときがたのしかった。
どの星に行ってみたいですか?
火星
宇宙で便利なことと不便なことふべんなことはなんですか?
重いものを運ぶのが楽です。なんでも浮いてしまうので、固定するのが面倒です。
地球は本当に写真のように見えますか?
写真と同じです。
400キロ上空から山や森もよく見えます。
他国の宇宙飛行士と仲良くなる秘訣を教えてください
長年訓練するので、仲良くなります。
同じ目標にむかって活動するので仲良くなれます。
宇宙で卵を割るとどうなりますか?
ここに卵がないんですが、割ったらそのまま丸い形になるでしょう。
水を宇宙空間に出したら、蒸発しますか?それとも凍りますか?
凍ります。
そのまま凍る水を使ってスーツを冷やします。
(ISSのトイレはどのような仕組みですか?)
固形物と液体物を一緒に吸い上げて、タンクに保管します。
一番美味しかった宇宙食はなんですか?
日本のメニューが大好きです。
その中でも米が大好きです。
宇宙から見た地球はどうですか?
とても壊れやすそうです。
大切にしなければならないと思います。
どの星がきれいですか?
コロンバスと言う星がきれい。
南半球の2番目にある星です。
ISSではどのような実験をしていますか?
たくさん行います。
無重力が人間の身体に与える影響を調べています。
(宇宙飛行士になるためのトレーニングで一番難しかったことはなんですか?
MBLとEVAの訓練が大変です。
休憩も食べ物もなく、6時間プールの中で訓練します。
一番難しかった実験はなんですか?
実験の準備を行ってきた研究者の期待にこたえるように、失敗しないようにすること。
UAEの大使も駆けつけた
今回のARISSスクールコンタクトですが、ISS側のオペレーターがUAEのネヤディーさんと言うこともあり、UAEの大使も急遽駆けつけていました。
午前中に仙台での公務を終えて、大使館に戻らずに東京駅から直接会場までお越しになりました。
ケーブルテレビ局の取材もあった
今回のARISSスクールコンタクト開催に当たっては、地元のケーブルテレビ局の取材が入っていました。
学校の宝だ!
今回のARISSスクールコンタクトが行われた烏山北小学校には、直接ファヒーム大使閣下からMOHAMMED BIN RASHID SPACE CENTERのスタッフジャケットが贈呈されました。
このスタッフジャケットはネヤディーさんも着用しているものと同じタイプです。
イベントを終了して
今回のARISSスクールコンタクトについて
交信時間は18時29分から約10分40秒ほど。
日本からは通算110例目のARISSスクールコンタクトとなりましたが、ARISS専用コールサインではなく、体験運用制度を利用することで、一般の社団局コールサインでの運用は国内では初となりました。
参加した子供達は18人、世田谷区烏山区民センター運営協議会による「烏山宇宙プロジェクト」が公募した18名が英語で宇宙飛行士との交信を行いました。